目次
はじめに
「クレヨンをうまく持てない」
「ハサミに興味はあるが、開閉ができない」
「机に座っているとすぐに姿勢が崩れる」
このようなご相談は、発達遅滞(体幹機能・協調運動機能の遅れ)が背景にあるケースが少なくありません。
今回は、体幹運動機能および協調運動機能の遅れを認める2歳保育園児に対し、えんぴつやハサミ操作の土台づくりを目的に運動・実動作を介して支援した訪問看護ステーションの事例をご紹介します。
事例概要
- 年齢:2歳(保育園在籍)
- 主訴:手先や身体の使い方が不器用
- 所見:
- 体幹筋力の弱さ
- 両手での協調動作の苦手
- 手指分離運動が苦手
- 細かい動作が苦手
保護者より「今後、えんぴつやハサミを使えるようになってほしい」との希望がある。
なぜ“体幹”がえんぴつ・ハサミ操作に重要なのか
えんぴつやハサミを上手に使うためには、手指の器用さだけでは不十分です。
① 近位安定性が遠位可動性を生む
体幹(肩甲帯・骨盤帯)が安定することで、初めて手指の繊細な動きが可能になります。
姿勢が崩れている状態では、
- ✔ 筆圧が不安定
- ✔ 線が途切れる
- ✔ ハサミ操作で肘が浮く
といった問題が起こります。
訪問看護での具体的介入内容
① 体幹・上肢機能の強化を目的としたダイナミック運動
● 四つ這いでの運動(トンネルくぐり)
- 体幹伸展活動を促通
- 肩甲帯の安定化
● ジャンプやマット登り、お父さん登り、棒引っ張り、ボール投げ
- 抗重力活動の向上
- 体幹回旋
- 左右協調性の向上
- 手指筋力の向上
これらを遊びの中で実施し、姿勢保持能力を高めました。

② 両手協調動作の促進
ハサミ操作には「利き手で切る」「反対の手で紙を保持する」協調性が必要です。
- ● 紙をやぶる
- ● 積み木の両手操作
- ● シール貼り(片手保持+片手操作)
徐々に役割分担が明確になっていきました。
③ 手指分離・巧緻動作・力加減練習
直接的な巧緻動作練習も段階的に導入しました。
- 洗濯ばさみつまみ
- おもちゃのトングつまみ
- 手に物を持ったままつまみ
- えんぴつでなぐり書き
物を介してのつまみ動作はどんどん上手になっていきました。


④ ご家族様へ自宅で出来る遊びの提案
- 両手遊びが上手になっている
- 握る力が強くなっている
- 巧緻動作が上手になっている
- 単発であればハサミで切ることが出来る
- えんぴつの筆圧が濃くなっている
- えんぴつ・ハサミの興味が増えている
「できる」経験が自己効力感を高め、活動参加が拡大しました。
小児訪問看護による発達支援の強み
- ✔ 自宅での自然な環境で介入
- ✔ 保護者への具体的な関わり方指導
- ✔ 保育園との情報共有
- ✔ 医療的視点での評価
単なる「手先の練習」ではなく、発達の土台から整える支援が可能です。
まとめ|えんぴつ・ハサミ操作は“姿勢づくり”から
えんぴつやハサミの操作は、 体幹機能 → 肩の安定 → 両手協調 → 手指巧緻性 という発達の積み重ねの上に成り立っています。
2歳という時期は、土台づくりに最適なタイミングです。
発達遅滞が気になる場合は、早期に専門職へご相談ください。 訪問看護ステーションでは、お子さま一人ひとりの発達段階に合わせた支援を行っています。

